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ビアンカを追って_6

 世界博物館。
 かつて富豪であったものが世界のありとあらゆる知を結集しようとして建設した。
 集めるという観点から世界地図の中央になる小島を選んだらしいが、航路が南方より北上するしかなく、オラクルベリー地方が地図上では近くとも、移動距離では一番遠いらしい。
 博物館へ来ることは学者・魔法研究家・富豪などあらゆる人々のステータスとなっており訪れる人はまばらながらに絶えることがなく、併設されている宿は常に予約で埋まっている。
 受け付けではこぎれいなメイドがおり、来客に笑顔で接している。
 ただ、不思議なことにその富豪は数年前から姿を見た者がいない。けれど展示品は定期的に入れ替わり、どの国とも違う風俗による品物や魔法装飾品が飾られている。
 時に改築されており、いつの間にか掃除がされており、たまに日記に新しいページが増えるとささやかれるこの博物館は、ちょっとしたホラースポットでもあった。

 決行の日が近づいてきた。
 数日で新月を迎える今夜、オラクルベリーより奴隷を乗せた船が出る。
 盛大なカジノでの宴をよそに人目をはばかるように港に蠢く人影。ルドマンの放った斥候がそれを伝書鳩で知らせる。
 すでに海上でゴッドサイド近海の世界博物館にやってきていたルドマン一向。航路は奴隷船に乗り込んだ斥候が定時に放つ閃光魔法をポートセルミの大灯台が受け、ルドマンに知らせるというものだ。
 ――待っていてくれ、ビアンカ。必ず君を取り戻す……。
 リョカは世界博物館の一室でソファに座りながらビアンカのことを考えていた。
 テリーの話を盲信するわけではないが、すがるものがそれしかない無力さを抱えつつ、今できることは何かと悩み、持て余していた。
「……リョカ君……、少しいいかね?」
 そんなおり、ノックとともにルドマンがやってくる。いつになくしおらしい服装のルドマンはゴッドサイド近海で引き返す予定。非戦闘民である彼がいてはリョカ達もおちおち戦っていられないからだ。
「はい、なにか?」
「うむ。最期の確認もあってだな……」
「はぁ……」
「今回の作戦に出資してくれた人は経済界の重鎮でもあって、正装で来てほしいのだが、良いかな?」
「はい。かまいません」
 決行前の作戦概要の確認も必要だろう。そしてお偉方と会うとなれば普段着で会うのも失礼だとは理解している。メイドから燕尾服を受け取ると、そそくさと着替えてルドマンを追いかけた。

 通された部屋はルビス正教会の礼拝堂であり、神父らしき人が壇上にいた。
 その向こうにはおよそ世界の富豪なのだろう、豪奢の服やドレスを聞かざる紳士淑女が並んでいた。
 燕尾服だけなら通用するが、無造作に伸びては切っている髪だと気おくれする空気。そんな中、皆の視線はリョカを待ち望んでいるのか、嬉々として向けられていた。
「……あは、あはは……」
 愛想笑いしつつ、先導するメイドについていくリョカ。すると別の入り口からルドマンがやってくる。彼は黒のタキシード姿であり、その後ろに純白のドレスを来た青い髪の女性を連れていた。
「……あれは? フローラさん?」
 なぜ彼女がここにいるのだろうか不思議に思った。とはいえ、彼女の能力を考えれば、場合によっては自分よりも戦力となりうる。かといってルドマンが娘を戦場に送るかといえばそれもあり得ない。だから不思議だった。
「これは?」
 リョカが神父の前まで来たとき、礼拝堂のざわつきが消えた。代わりにおごそかなパイプオルガンの音が流れ、聖歌隊が凛とした歌声で包む。
「今日、これよりリョカ・グランバニアとフローラ・レイク・ゴルドスミスの婚礼の儀を執り行う……」
「は?」
 唐突に語りだす神父にリョカは思わず声を上げた。そしてあたりを伺うことしばし、これが幼いころにアルパカの教会で幼馴染とこっそり覗いた結婚式に似ていることを知る。
「あの、これはいったいどういうことです!?」
 混乱するリョカは思わず声を上げるが、それも聖歌隊の歌声でかき消される。その間も神父はとつとつと婚礼の字句を詠み伝え、隣の女性も頷く。
「どうして? フローラさん、君は僕との結婚に反対じゃ……」
 婚礼の場にはふさわしくないほど取り乱すリョカは、女性の肩を掴む。そして気付く。
「貴女は……誰だ?」
 女性は姿形こそフローラとそっくりで、顔も遠くに見ればごまかせる。しかし、絵画の趣味を持つリョカからするとその違いは歴然であり、ヴェールの下からでも別人の特徴を掴んでいた。
「……汝、健やかなるときも、病める時も、夫、リョカ・グランバニアを愛することを誓いますか?」
「はい、誓います」
「……汝、健やかなるときも、病める時も、妻、フローラ・レイク・ゴルドスミスを愛することを誓いますか?」
「ばかげている。彼女はフローラじゃない。それに、僕は彼女と結婚する意志はない! こんな茶番!」
 しかし、高らかなに鳴り響く聖歌隊の声がすべてを隠す。壇上より離れた位置にいる来賓からは、戸惑う新夫の落ち着きのない態度にしかみえないのだろうか。
「ここに二人が結ばれたことを、来賓の方々と共に証人となり、ルビスに誓うでしょう……」
 〆の文句を告げる神父はルビスへの祈りを捧げると、二人を祝福するかのように両手をかざす。
「皆様、今日ここに生まれた一組のおしどりに祝福を……」
 戸惑うリョカのことなど蚊帳の外に、来賓の割れんばかりの拍手が起こる。そして手を取られ、押し出されるように壇上を後にさせられた……。

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