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ビアンカを追って_8

 新月を迎えた夜だった。
 遅い時間に港を出る準備をする貨物船は不審であるが、それを咎める者もいない。
 リョカ達は潜むべく船倉にカモフラージュを行い、出港を待った。
 ――待っていて、ビアンカ。僕が必ず君を助け出す。そして、父さんの敵を取るんだ。
 強く心に誓うリョカは、自然と昆を握る手もきつくなる。
 ――ああ、そうだ。その時はデボラさんのこともあったっけ……。まいったな。頭が痛いよ……。
 自嘲気味に笑う余裕もある。それも同行する勇者のおかげかもしれない。
「おーい、リョカ」
 シドレーの呼ぶ声に振り向くと、出入口から黒い竜が顔を出す。
「俺はそら飛べるし、先に奴隷船を見に行くで。まさか見失ったらやばいからな」
「そうかい、ありがとう」
「ああ。まずはビアンカはんを取り戻さないと話にならないからな。ま、リョカの場合はもっと別のことで悩むことになろけどな」
 がははと笑いながら翼を広げるシドレー。ぶわっと風を巻き起こすと、すぐによる空に見えなくなった。
「まったく、シドレーったら」
 悩むべくところはリョカの痛いところ。ただ、今はそんな冗談を言ってくれるほうが気が楽かもしれない。
「よっと……」
 荷物が降ってくると、今度はテリーが顔を出す。
「いよいよか……」
 彼は船倉に毛布を敷くとそこに座り、剣の手入れを始める。ミスリル銀の剣は彼の意気込みに呼応して火花のようなものをまき散らしていた。
「はい、よろしくお願いします。その、ビアンカのことも」
「ああ、任せておけ」
 彼もまた緊張をしているのだろう。いくら強大な力を持っていても、相手もまた強大な存在なのだから。
「お前もしくじるなよ」
「はい」
 リョカは頷き、時を待った……。

**

 出港の時間が近づいた。本来なら伝書鳩による連絡がある。それを合図に難破船を装って航路を交叉する。しかし、未だ来ない。そしてシドレーも戻ってこない。
「おかしいな……」
 リョカは揺れる船倉からはい出し、空を見る。するときらりと光りが走った。それは瞬く間に消えて、何かを望む暇もなかった。
「……」
 たかがおまじないなどと思いつつ、残念がる気持ちがある。焦る気持ちを逸らす為にもあってか、再び空を見つめ、流れる星を探す。
 すると、またきらめく星が一つ見えた。
 それは眩く煌めき、揺れていた。
「……え?」
 だんだんと大きくなり近づいてくる。そして、点が拳のような大きさになった時、叫んだ。
「何か来ます!」
 リョカは叫び、飛び出す。
 エネルギーの塊が異様な空気を放ったところで海面が波立つ。甲板から船員が退避し、床板を破ってテリーも飛び出す。流れ星は桟橋に落ちるとそのまま浜辺を抉った。
「敵か!?」
 テリーは剣を構えるとペンダントを胸元から出す。リョカも昆を構え、土煙の中、瞬きを我慢する。
「はっ!」
 砂埃が揺れた時、白い刃がテリーに飛ぶ。彼はそれを剣でいなし、放ったであろう敵影に切りかかる。
「ここだ!」
 移動するそれをわずかな月明かりで揺れる影で追い、斬りかかる。
「ぐっ!」
 砂煙に血しぶきが飛ぶ。そのうめき声は男の物だが、続くものは馬の嘶き。
「まさか……」
 砂埃が落ち着きだし、見え始める紫の鬣と青白い皮膚。巨大な肉体を守るのは燃え盛る炎を彷彿させる鎧。蹄の手で器用に構える槍はテリーの一撃で受けきれず、肩口に一撃を入れられていた。
 その姿はかつて父を屠った憎き相手だった。
「貴様!」
 リョカは昆を握り直すと、走り、とびかかる。
「ぬん!」
 その魔族はテリーを振り払い、続くリョカの振り下ろす一撃を炎の盾で受ける。
「お前だけは赦さない! たぁあああ!!」
 最初の一撃で盾はかなりへこむ。さらなる連撃で盾は破片を火花のように散らしていく。
「く、はっ! ふん! リョカか!」
「僕の名を!? やはりお前は!!」
「忘れぬ! その名前!」
 魔族は槍を強引に振り回すと、リョカを追い払う。
「ジャミ! 下がりなさい!」
 凛とした声には冷たい威圧感がある。威厳があるのだろうか? それとも、にじみ出る魔力が精霊を震わせるのか? かつての彼女の声ではなかった。
「ビアンカなのかい……?」
 砂煙から現れた彼女のシルエットに、リョカは驚愕していた。
「ほう、これはこれは……。魔王自らのご出陣とは、手間が省ける」
 テリーは剣を握り直し、ビアンカに向ける。
「テリーさん、待って! 僕が、僕に説得させてください!」
 リョカがそういう必要もなく、ジャミが彼に襲い掛かる。
「悪いが、お前の相手は俺がさせていただく! 主の邪魔をしてもらっては困るのでな!」
「ふん、馬の! 強靭な肉体と爪……蹄をもつ貴様がなぜに人間の武具に頼る?」
 ジャミの装備は人間、もしくは妖精によるものであるのは見てわかる。
「情けない魔族もいるものだな! 魔族としてのプライドはどうした?」
「その驕りを捨てて勝ちを拾いに行く!」
 とびかかるテリーにジャミは懐に隠した爆弾岩の欠片を放り、槍でつく。寸前で起きた爆発にテリーはとっさに庇う姿勢を取る。その合間を縫って蹄が二つ、迫りくる。
「ぐ!」
 ジャミは爆発の中、テリーに背を向け、前足で地面を押さえると、後ろ足で彼を思い切り蹴っ飛ばす。馬ならではの脚力が、雷神剣のガードごと、テリーを吹き飛ばした。
 かなりの距離を飛ばされたらしく、海面に水しぶきが立っていた。
「敵襲だ! 出ろ! ルドマン様を守れ!」
 騒ぎに気付いた衛兵たちがやってくる。しかし、それも降り注ぐ炎と氷の塊に阻まれる。
「雑魚はおとなしくしていてもらおうかねぇ!」
 上空にはさらに炎の魔物と氷の魔物が浮いていた。
「あたしらの王女様が話があんだってさ! それまで黙っていなよ。後できっちり相手してやるからさ」
 高らかと響く笑い声と降り注ぐ炎に氷。空からの攻撃では防戦一方と、せめて主を守りに行く。
「ビアンカ……これは一体……」
「リョカ、ごめんね。こうするしかないの……」
 ビアンカは魔王としての圧力を背負いながらも、かつての雰囲気を持っていた。
「私と一緒に来て……。そうすれば、私は貴方と一緒にいられる。貴方と親しい最低限の人たちは助けられるから……」

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