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ビアンカを追って_14

「リョカ……ようやく来てくれた……。うれしい……。ふふ……本当に憎らしい人……」
 面前に立つリョカにビアンカはようやくほっとした様子で彼を見る。
「ねぇリョカ……。これから私と一緒に暮らしましょう? お父様の国で、私たちの幸せのために……」
「ああ、君から魔王の力を無くして、僕と一緒に……」
「それはできない。私が力を失えばグランバニアどころかどこも守れない……。だから……」
 彼女が教団に連れていかれていた間に何を吹き込まれたのかはわからない。だが、魔王ともあろうビアンカを恐れさせる何かがあるのだろう。
「さ、行きましょう……。駄々をこねないで? 私がかちえた最期の譲歩なの……。だから、もうこれしかないのよ……リョカ……」
 右手を差し出すビアンカにリョカは未だ戸惑いを見せる。
「ビアンカ、一体何があったのか、せめて教えてくれ。僕には何もわからない……」
「ええ、私もわからないことばかり。でも、私の持つ力よりもさらに強大な力を持つ存在がいるのよ……。だから……」
 リョカは彼女に近寄り、手を伸ばす。間近に居て感じる威圧。身ごもることで力を失ってなおこの力を持つ彼女。それをさらに怯えさせる存在が明るみとなり、リョカは気圧された。だから、今はそれしかできないことを知っている。
「そうはいかん!」
 長々と無駄話をしている間に回復したテリーがさらに上空から舞い落ちる。
 リョカは彼の目的を悟り、昆で剣を受ける。
「テリーさん! 貴方は何度裏切るつもりですか!」
「俺は勇者だ! 魔王を打ち破るのも俺の役目だ!」
 電撃を帯びた一撃は昆で受けても伝わり、目が白黒する。
「リョカ、どいて……。半端な勇者なんて私の相手じゃない!」
 ビアンカは再び魔法を整える。しかし、リョカは彼女の前に立ち、テリーの斬撃を受けつつ、一方でビアンカにテリーを撃たせない位置取りをする。
「どいて……リョカ……」
「させない! 勇者と争ったら魔王じゃないか? 君は魔王じゃない。僕の大切な幼馴染なんだ。ビアンカなんだ! だから! だから……一緒に、僕と一緒に……」
 両手に紫の霧を手袋のように纏いつつも雷撃は確実にリョカを感電させる。
「馬鹿野郎が! お前は何をしたいんだ!」
 誰を守って戦っているのかわからないリョカにテリーは叫ぶ。
「そうよ、リョカ……貴方は人間なのだから、せめて勇者の前に立つなんてしないで……」
 ビアンカを人として、人の部分を守ろうとするリョカに彼女は涙を流していた。
 そのうちに魔法も霧散し、その両手は顔を覆う。ジャミはその場を引き揚げることもせず、彼女を背負う。
「僕は……僕は……」
 雷撃を受けぼろぼろになったリョカは疲労も募り、精神も削られていた。
「……なぜ、時の精霊が貴様を守る……?」
 テリーは彼の周りに漂う時の精霊を見つめつつ、剣の切っ先を向ける。
「前にルラムーン草のしずくを飲んだからでしょうか?」
「違うな……。お前が……」
 何かを飲み込み、再び剣を振り上げる。
「大空を舞うラーミアを、古き因縁より世界を救う力を我に! 唸れ、ギガデイン!!」
 それは詠唱というよりも呼びかけだった。空の精霊が彼の振り上げた剣の切っ先に集まり、紫の電撃を成し、リョカの背後に守られるビアンカとジャミに向かう。
 ――させない!
 リョカは最期の力を振り絞り、二人のさらに上へと昇る。そして昆を構え、稲光を受け止める。
 紫の霧を纏うリョカだが、最大級の雷撃魔法がそれをはらう。叫び声をあげることもなく、黒い煙をあげながらゆっくりと落ちるリョカ。
 一瞬、何があったのか誰にも分らなかった。
 死を覚悟したビアンカは目を閉じており、上空で起きた破裂音が過ぎてからようやく目を開けた。
 その隣をだんだんと加速しながら落下するリョカ。
 銀髪の剣士も上級魔法を放った反動で空中にとどまるのがやっとらしく、それを見ているだけ。
 そして手が届かなくなったところでジャミが空を駆ける。
「ジャミ、待って! リョカが! リョカが死んじゃう!」
「いけません、ビアンカ様! あの者は勇者です! 理由はわかりませんが、空の精霊を使う……! スカイブルーオーブの持ち主です!」
「それがどうしたっていうの? 私は魔王よ! あんなまがい物の半魔王の勇者なんて相手じゃない! それよりもリョカを! リョカを助けて!」
「私は貴女を助けたい!」
 ジャミは魔王の意思に背き、さらに暴風を巻き起こしてそれに乗る。
「リョカーーー!!!!」
 むなしく響くビアンカの声もすぐに風の音にかき消される。
「馬鹿が……」
 テリーはなれない魔法の連続にめまいを覚え、そのままふらふらともと居た大地を目指す。
 首から下げたペンダントからは光が失われ、瞳も元の青いものに変わっていた。
 そして徐々に失速し、海面に飛沫を上げた……。

++

 目覚めた時は身体が重かった。潮を含んだ服は背中のほうがまだびっしょりと濡れており、前髪をはらうと乾いた塩がぱらぱらと落ちる。
 海に落ちたまでは覚えていた。それで死ぬはずもないということも知っていた。
 意識がはっきりすると同時に首飾りを確認する。大切な友から託されたそれは今も変わらない青い空のような澄んだ色をしていた。
「ルビス……め」
 むっとしながら言う彼だが、それはどことなく懐かしさともう一つの感情を含むもの。
「お、起きたん?」
 あたりを見回すと黒い竜がいた。
「シドレーか? お前が引き揚げたのか?」
「ん? ああ、そうやで。恩にきてーな」
「余計なことだな」
「お、そういう態度? まったくあんたって人は……。それよかリョカはどうしたん? 俺が戻ってきたときにはもう終わってたし……」
「あいつは……死んだろうな」
「死んだ……? おいおい冗談いいなさんな。リョカが死ぬはずないやろ。そら、俺もラインハットで別れた時は死んだと思ったけど、あいつは教団やったけ? 奴隷から抜け出して……」
「海に落ちた……。そうでなくとも俺のギガデインを受けたのだ。死なないはずがない……」
「ギガって、なんであんたがリョカを?」
「あの馬鹿がギガデインからビアンカを守った……。それだけのことだ」
「ビアンカはんを? ってか、あんたの話じゃビアンカはんからは魔王の力を奪うだけって……」
「ビアンカが協力的ならな……。だが、あいつは違った。魔王の力を使い、この世界に侵攻する……いや、あいつとは別にこの世界を侵攻するものがいるのだろう。その手先となる代わりにリョカとグランバニアだけは守るつもりだといった」
「ほええ、魔王さんが誰かの手先とな……」
「それならば奴は魔族だ。それをはらうのは勇者の役目……」
 立ち上がり、閃熱魔法で背中を乾かす。
「俺はビアンカを追う……。そしてその背後の存在も倒す……」
「倒すって、あんたリョカは?」
「奴なら死んだ。さっき言ったろ?」
「死んだって、そんな殺生な……」
「海に落ちたのだ。助からない」
「海って……」
 去っていくテリーと海を見つめるシドレー。
 波は砂浜を洗い、白い泡を立てては戻っていく。
 リョカを飲み込んだ痕跡などあるはずもなく、ただ、ひたすら続くその繰り返しに、シドレーは茫然としていた……。

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