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……タイッ!?_07

号泣

 ある日の放課後……。

 好奇心に負けたのだろうか、それとも性欲か……?
 紀夫は倉庫の裏にあるバケツによじ登り、空調の隙間から中の様子を覗こうとしていた。
 聞きかじった程度の法律知識でも覗きが良くないことだということは知っている。ただ、もし校内で性行為をしているのなら、それもまた条令に違反する。そんな解釈で自分の覗き行為を正当化しつつ、紀夫は換気扇の隙間から中を見る。
「えっと……わ、アレ、香山さんじゃないか……」
 もちろん驚いたのは同級生がいたからではない。その様子、状況が異質であったためだろう。
 今の里美は三人の男子に囲まれた状況で、尚且つ三本の醜い棒を向けられているのだから。
 ――何してるのさ? 一体……。
 見覚えのある棒の先からは透明な汁が垂れ始め、ズンズンと鎌首を持ち上げている。
「やめてよ……、そんな汚い棒しまってよ……」
 普段勝気な彼女からは想像できないほど弱々しい声がした。
「いいじゃん、抜いてよ。俺、手でいいからさ……」
 妙に低い声には聞き覚えがある。というか、先ほど掃除を押し付けてきた田辺悟だ。
「約束が違うじゃない……、オナニーだけでいいって……」
「だってさ、里美のオナニー見てたら興奮してきてさ……だから……」
 ――オナニー? 香山さんがここでオナニーしてたの?
 もう数分早く辿りつけたら自分も相伴にあやかれたかもしれない。
 そんな不埒な妄想を抱きながらも、彼女に突き出される陰茎をみていれば、さらに行為を見ることができるかもと期待する自分がいる。
 ――ダメダメ、ダメだよ。そんなの、香山さん、嫌がってるし……。でも、どうやって止める? 僕じゃあいつらにかなわないし……。
「なあ、咥えるぐらい簡単だろ? 平山さんだって佐伯のおいしそうに咥えてたじゃん。里美だってできるっしょ」
「あれは好き同士じゃない……」
「なら俺のこと好きになれよ」
「ばっかじゃない! あんたみたいな奴、誰が! あんたのを咥えるぐらいならミミズを飲み込むほうがずっとましだわ」
 ミミズのようなものに噛み付かんばかりに叫ぶ彼女はいつもの様子だが、圧倒的に不利なこの状況は変えられない。
 ――香山さん、どうしよう……。
 それは窓枠を掴む彼も同じこと。ただ、その気持ちとは裏腹にズボンの中でいきり立つものは熱と硬さを蓄えつつある。ついでに好奇心が後押ししてからか、背伸びをしてしまい……。

 がらがらどしゃーん!

 バケツと一緒に盛大に転倒してしまったわけだが……、
「用務員さーん、倉庫の鍵壊れてますよー! 見てくださーい!」
 何を思ったか大声を張り上げる紀夫。
 すると倉庫の中では少年達がうろたえたらしく、どたばたと音がする。そして数秒後、見知った男子三名がずり落ちるズボンを押さえながら出て行く姿が見えた。
 ――ふぅ……、なんとかなった。
 影で様子をみつつ、ため息をつく紀夫だが、用務員が来る様子は一向にない。当然だろうハッタリなのだから。

**――**

 苦し紛れの策で凌いだものの、倉庫内にはまだ里美がいる。
 声をかけるべきだろうか? だが、どうやって?
 薄暗い、埃臭い倉庫に押し込められ、自慰行為の強要、そして陰茎を見せ付けられて、口淫をせがまれる。強姦に近い行為は、きっと少女の神経をすり減らしたに違いない。
 女子の心理に人一倍疎い紀夫にしてみても心細いのが分かる。だが、自分が顔を出してよいものなのだろうか。
 紀夫も男。彼女を追い詰めていたモノ達と同じ男。いくら窮地を救ったとはいえ、怯えられるのではないだろうか? ここは一つ、同性に来てもらうべきだろう。幸い、グラウンドにはピンクのジャージ姿が一人見える。
 ――よし、先生を呼んでこよう……。
「あ、あのさ、香山さん。今平山先生を呼んでくるからさ、ちょっと待っていて……」
「……いい、つか、平山さんなんか呼んでも頼りにならない……」
 里美の低い声が聞こえた。
 彼女ならではのガッツというべきか、思ったよりは元気がある。
「でも、こんなの、ほっておけないよ……」
「ちょっと来てよ……」
「え? あ、ウン……」
 唐突な提案に間抜けな返事を返すしかできない自分は里美と比べてまだまだ子供だと思う紀夫だった。

**――**

 狭い部屋、くらい部屋、埃の舞う部屋。女子と二人きり。しかも、相手はここで自慰行為をしていた。
 この異様なシチュエーションに紀夫は何も考えられずにいた。
 いや、多少の期待はしていた。
 お礼にと、里美がキスをしてくれる。
 女子の心理を知らない童貞らしい都合の良い妄想でしかないが、ゆだり始めた頭にはそんな状況が連続再生されている。
「ね、どこから見てた?」
 入ってきた紀夫に背を向け、ジャージを直す里美は、彼の淡い妄想を砕く声で聞き始める。
「え? どこって、天窓から……」
「そうじゃなくて、何時から?」
「あ、それは、あの、香山さんが咥えろって言われたときから」
「ホント? あたしが……その、してたとこ、見てない?」
「何を? 見てないよ」
 何をしていたかはもう知っている。だが、あえて言う必要も無い。というより、言う勇気が無い。
「ふーん、あんた何してたの?」
「なにって、掃除? ああ、そっか、田辺に押し付けられてたんだっけ」
「あそ……」
「香山さん、大丈夫?」
「大丈夫よ。もういいわ。出てって」
「だって、あんなことされて、一体何がどうしたの?」
「あんたには関係ないでしょ? つか、何覗いてんのよ。このヘンタイ」
 助けてもらった恩も忘れたらしく、彼女はきつい口調になりだす。
「そんな、だって、変な声が聞こえてきたから、だから、僕、それに香山さんだって危なかったじゃん。僕が通りかからなかったら今頃……」
「フンだ! あんな奴ら怖くないわ! つか、覗いてたのよね。あたしがされそうになるの、見てオナニーでもしてたんじゃない?」
「なんだよ! もういいよ! 勝手にしなよ!」
 真っ赤になって反論するのは、罵倒されたからではなく図星を突かれた為。事実、もし里美が悟のモノを咥えていたら、おそらく一挙手一投足見逃すまいと目を皿のようにしていただろう。そして……。
 だが、結果的には助けることになった。それならこのまま英雄気取りで倉庫を出るのも悪くない。快楽の伴わない満足感を片手に紀夫は立ち上がり、言われるままに外に出ることにする……も、
「待って、行かないで……」
「なんでさ? 用無いんでしょ? 僕まだ掃除が残っているから……」
 押し付けられた掃除などこの際忘れてもいい。それに、彼らには小さくとも何か罰が遭ったほうがいい。そう思っていた。
「お願い、行かないで」
「どうしたの?」
「なんかね……、寒いの。ほら、震えてる……」
 換気扇から差し込む光に照らされる里美の肩は、よく見ると小きざみに震えていた。
 今は四月の終り。最近はたまに寒くなることもあるが、今日は震えるほどでは無い。だから、理由もわかる。
「うん。わかった。じゃあ、ドア、開けとく?」
「締めて……あと、鍵も……」
「鍵も?」
「あいつらが戻ってきたら困るし……」
「ウン」
 重いドアを閉めて錠をかける。より強度な密室となるも、先ほどの興奮は嘘のように和らいでおり、紀夫の愚息も元気が無い。
「あ、あのさ……」
「ゴメン話しかけないで……」
「あ、ゴメン」
 気丈な彼女でも、やはり……。
 里美は背中を向けたまま体育座りでいる。なのに紀夫が一歩でも近づこうとすると、「来ないで」切なそうに呟く。金切り声で言われたら今度こそ出て行くのにと思う紀夫だが、しっかりとつかず離れずの距離を取らされる。
 そして沈黙。
 数秒程度でも重く圧し掛かる。
 全ては強姦未遂の所為。
 自分は何も間違ったことをしていない。覗いていたのはおかしな行為だが、結果助けることに繋がった。
 だが、何故こうも陰惨たる空気に晒されるのか?
 気を使おうにも会話自体拒否される。かといって傍に行って何を出来るでもない。寒いと言うからといって、ブレザーを着せてあげるのも季節的におかしな行為。そもそも自分のキャラではない。
 紀夫は仕方なく気晴らしにと、できる範囲で掃除を始めることにした。
 運動会で使うような角材は脇に避け、錆びの目立つ支柱に絡むネットを解きながら巻きなおす。
 ゼッケンやボールを色で分け直し、ついでに穴の開いたボールを取り除こうと、ちょっとだけ彼女のほうへと歩み寄る。
「ねえ……」
「はい!」
 近づいたのを咎められたとおもった紀夫は直立不動の姿勢になり、定位置に戻る。
「あのさ、やっぱ……、ありがと……」
 しかし、続く言葉は拒絶ではなく感謝の気持ち。
「ん? あうん……」
 ありがとう。
 たった一言なのに、なにかが変わった気がした。
「ねえ、なんであんなことになったの?」
 だから自分から声をかけてみた。もちろん、里美から話し掛けてきたとはいえ、まだ声に張りが無い。刺激しないように出来るだけ抑えて言葉を選んでのことだ。
「うん……それがね……、男子、あー、どこから説明すればいんだろ」
「落ち着いて……、ゆっくりでいいよ。僕も倉庫掃除してるから」
「えっと、あたし、陸上部なんだけどさ、男子が部室でオナニーしてて……」
「うん」
「それで、愛理先生とあたしで現場をおさえたんだけど、先生、佐伯とセックスして……」
「うん?」
 話が飲み込めなくなり始めた紀夫は思わず反芻してしまう。
「けど、そのことばらされたくないなら、お前がオカズになれって……それで、無理矢理ここにつれてこられて……」
「え? え? どういうこと?」
 部室での性行為を覗かれたのが里美だったというのであれば脅迫のネタにもなるだろう。しかし、他人のセックスをばらすというのはいかがなものか?
「それで、あたし、怖くて、君が来てくれなかったら……今頃……、いやあああああ!」
 腕を抱く手を解き、頭をかきむしる里美は、先ほどの出来事を反芻するどころか飛躍させたらしく、軽いパニックを引き起こす。
「香山さん、落ち着いて! 落ち着いて……、ね? ね? ね……」
 一方、その豹変ぶりに驚いた紀夫は彼女に駆け寄ると、訳もわからずただ彼女を抱きしめていた。
「ああああん! うわああああん! うっぐ、えっぐ、怖かったよぉ……助けてよぉ……」
「大丈夫、もう大丈夫……」
 胸元をドンドンと叩く里美は容赦も遠慮も無い。
「だって、だって! 男の子、うえっぐ、乱暴で、ひっぐ、酷いこと言ってくるし、それに、それに、うわあああん……」
「あ、あの、香山さん、もう少し、弱く……お願い……しま……あたっ!」
 叩く手がグーを握った頃、紀夫は床に押し倒され、バリバリと肩口を引っかかられてしまった。

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