FC2ブログ

目次一覧はこちら

……タイッ!?_23

盗み聞き?

 開いた窓から聞こえてきたのは良く知った声。二人は顔を見合わせて窓の下へと急ぐ。
「なんでこうなっちゃうんだろ。あたしって素直じゃないよね……」
 倉庫の外はグラウンドだが、備品の出入りがあるため応援席とは離れており、準備運動なども禁止されている。ある意味内緒話をするにはもってこいな場所だが、今は都合が悪い。
「それというのも全部島本が悪いんだから……、なによ、でれでれしちゃってさ……感じ悪い。あたしを守ってくれるんじゃないの?」
 半開きの窓から中を伺うと、体育座りをしながら俯く里美の姿があった。
「……ねえ、外にいるのって里美ちゃん?」
 紀夫は無言で頷く。
「あたし、すごく不安なのにな……」
 切なげに言う里美は腕でゴシゴシと目の辺りを擦る。もしかしたら既に泣いているのかもしれない。
「……あのさ、なんか里美ちゃん落ち込んでるみたいだけど……励ましてあげたら?」
「……でも」
 励ますことに異論は無い。けれど、この状況がばれても困る。青春と性春の二律背反に陥る紀夫はどちらを優先すべきかと悩んでしまう。
「……でもじゃないでしょ。君のすべきことは何? 里美ちゃんが好きならできるでしょ?」
「……は、はい……」
 『好きなら』といわれると語弊がある。ただ、今はそれを言い争うべきときではないと、紀夫は覚悟を決めて深呼吸を繰り返す。
「あ、あのさ、香山さん……その、いろいろゴメンね」
「え? あ、島本? 嘘! 居たの?」
 壁の向こう側でガサガサと音がする。不意を突かれたことと独り言を聞かれたバツの悪さがあるのがみてとれる。
「倉庫でちょっと探し物してて、だから、その盗み聞きみたいで悪いんだけど……」
「な……うん。そうだったの。ふぅ……なんかそんなことばっかりだね、君は」
「そうだっけ?」
「うん。だって、あの日だってさ、君が倉庫を覗いてて、そんでじゃん。今は倉庫の中からだけどね」
「あはは……そうだね……」
「……」
「……」
 一人不安を漏らしていた彼女だが、気を取り直してもう一度というわけにも行かず、しばし無言の時が流れる。
「……ちょっと、マネージャー君、なんか言いなさいよ」
「……だって、なんて言えば?」
 壁に耳を押し付けた紅葉が睨むようにして言う。
「……あのさ、さっきのことゴメンね。なんか変に気が立っててさ。島本に当たってばっかみたいだよね」
「しょ、しょうがないさ、香山さんは試合目前だもん。憂さ晴らしに付き合うのもマネージャーの仕事だよ。なんなら今からそっち行くよ」
「んーん、いい。なんかこの方が自然に話せそうだから。っていうか、顔みるときっと余計なこと言っちゃうもん」
「……うんうん、いい感じだぞ?」
 先ほどまでとはうって変わって二人の甘酸っぱい雰囲気を楽しむ紅葉。
「じゃあさ、この状況ならいえる? 香山さんの不安とか不満」
「そうね……」
「……その調子、その調子……」
 親指を立てる紅葉に紀夫も握りこぶしを返す。
「そうね……、最近さあ、君理恵と仲良くしてない?」
「……にひひ、嫉妬してるぞよ」
「うん、実は理恵さんがちょっと危ない目にあって……。でも安心して、ちゃんと助けてあげたから……」
「ふーん、そっか、理恵がね……なるほど」
「……助ける?」
「……あの、あとで話しますから……」
「ん? 誰かいるの?」
「え? ああ、俺と香山さんがいるよ? なんつって……」
 誤魔化すスキルは未だ成長無し。紅葉もばれまいと口を覆って息すら我慢する。
「まあいいわ。あとさ、最近紅葉先輩が疲れるのよね……」
「……なんですと!? ムガ、ムゴ……」
「あはは、びっくりしたら変な声が出ちゃった……」
 後輩の謀反に声を裏返らせる紅葉の唇を乱暴に手で塞いで凌ぐ。
「だってさ、なにかっていうとあたしと君をくっつけたがるんだもん」
 心配をよそに里美はそこまで気に留めていないようだった。ただ、自分とカップリングされることをうざがっているのを聞くと、多少なり心に隙間風が吹く。
「君だって困るよね? 紅葉先輩に変なこと言われたりしてさ!」
「まあ、そうかな……なんつって……」
 目下その先輩がすごい目付きをよこしており、板ばさみの構図を呈す。
「……へー、マネージャー君もそう言うんだ……それなら……」
「……だってしょうがないじゃないですか、励ましてっていったのは先輩じゃないですか」
「……君は上見てるの……」
 機嫌を損ねたらしい紅葉はぴしゃりと言うと、彼の下半身に手を回し、ズボンを止めている結び目をしゅるしゅると……。
「先輩って変な趣味あるみたいだし、なんか付き合いづらいっていうか、やりにくいのよ……」
「ふーん、そうなんだ……あっ!」
「どうかした?」
「あ、いや、探してたものがあったから、つ……い、ね……」
「あそ……。それでね……あたしさあ……」
 話を元に戻そうとする里美とは対照的に、紀夫はある種の刺激との戦いが始まっていた。
 それは下半身に訪れる未知の刺激。
 生暖かく、ざらざらとしていながら唾液でよく滑る舌の刺激。
 それは紅葉の口腔内からだった……。

続き

Trackback

Trackback URL
http://13koharu.blog73.fc2.com/tb.php/89-ccac3b37

Comment

Comment Form
公開設定

プロフィール

小春十三

Author:小春十三
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ

創作検索ぴあすねっとNAVI
dabundoumei
trt
オンライン小説/ネット小説検索・ランキング-HONなび  
リンク予定


二次元世界の調教師様のサイトです。



無料アクセス解析