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……タイッ!?_28

合宿

 午後の練習の前に近くの食堂でお昼を取る三人。
 学生相手に商売をしている飯処「味よし」は大盛りの大味が売りで、一人前のチャーハンですら二合近く米が使われていた。向かいには里美の注文した餡かけチャーハンが運ばれていたが、それもかなりのボリュームを誇っている。
「うわあ、こんなに出るんだ……」
「そう? 普通じゃない?」
 同じくチャーハンを頼んだ理恵はレンゲ片手にイタダキマスと手を合わせる。
「なに言ってるのよ。男なんだからコレぐらいガツンと食べなさいよ。いい? 君が華奢なのはちゃんと食べないからで……」
「は、はーい、食べます。がっちりたべますよ~」
 長くなりそうな小言を遮ろうと、紀夫にとってかなりの難題に取り掛かった……。

 しかし、
「もう食べられないよ~」
 十数分程度した頃にはもう根を上げていた。
 どんぶりのようなお皿にはまだごはん一膳分のチャーハンが残っている。
「おいおいだらしないぞ。あとちょっとだし、もったいないよ」
「でも、俺……」
「まったく……まあしょうがないか」
 やけに聞き分けのよい里美は彼を咎めることをせず、代わりにレンゲを奪い……、
「あたしまだ入るから……」
 既に完食し終えた自分の皿を脇によせてもぐもぐと食べ始める。
 同級生の、しかも女子の食欲に軽いショックとおかしな感動を覚える紀夫は、心なしかでっぷりとした自分の腹を揉みつつ、消化を助けることにする。
 ――里美さん、どっちかっていうとスレンダーだよなあ。
 体重こそ知らないが体系は日々の活動で常に見ており、最近では性的な興奮よりも肉体の機能美のほうに感心することが多い。
 ――やっぱりお尻とか胸に行ってるのかな?
 隣の女子は一人前で充分らしく、口元についたごはん粒を取りながら水を飲んでいる。
 ――理恵さんの場合お尻にばっかいってるのかも?
 ぷりぷりのお尻を盗み見ながら笑いを堪える紀夫だが、急に口に大味な塩加減が飛び込んでくる。
「うわっと?」
 ゴクリと飲み込むも、使われているはずの無いリンゴの風味に戸惑うこと三秒。
「もう、また理恵のお尻見てたでしょ。君ってホントにスケベだね」
「ご、誤解だよ。別に俺は……」
「ノリチンはエッチだししょうがないよ、サトミン。ねー」
 フォローにならない弁護をしてくれる理恵に苦笑いしつつも、どこかそわそわする自分がいるのに、紀夫は気付けなかった……。

**――**

 練習前のミーティングのとき、今日は珍しく愛理が部員を集合させた。
 いつもなら自主性をといいながら和彦にべったりな彼女だが、今日は冊子を片手に得意げに語りだす。
「えっとお、再来週のお、八月からの話なんだけどね、集団強化合宿があるみたいなの。それでえ、皆の中にも参加したい人っているよね? 人数制限あるから全員は無理だけど、希望する人は先生に教えてね」
 配られたパンフレットには県のイメージキャラクターが鉢巻タンクトップ、短パンで汗を流している絵があり、どちらかというとボーイスカウトの類にもみえる。
 しかし、去年参加した部員の話によるとかなりハードなものであり、またそれ相応に価値のある合宿らしい。もちろん、上位入賞を目指す部員限定だが。
「僕、参加します」
 最初に名乗りをあげたのは意外にも和彦だった。
「え、和彦君、参加しちゃうの?」
「はい。来年こそ必ず全国行きたいから……」
 どちらかというと引っ込み思案なイメージの強い和彦だが、総体で結果を残しており、また愛理の指導は彼にとって役不足といわざるをえない。
「でも、合宿中はその……」
 それは彼女も知るところではあるが、何故かもじもじとしだし食い下がる。
「是非お願いします」
 かといって拳を固める和彦の決意は折れそうになく、まっすぐに愛理を射抜いていた。
「うん。ガンバレ」
 部員に対する態度、というよりひとときの別れを悲しむ寂しい女を演出する愛理にたいし、部員一同手で風を仰ぐ。
「……えっと、他に参加する人は?」
「……えー、どうしよ」
「……優はどうする? ……」
「……んー、バイトあるし……」
「……稔が参加するなら一緒にいこっか? ……」
「……先輩もどうです? ……」
「……あたし補習あるから……」
「……綾も参加しなよ……」
「……塾があるし……」
「……そういうの、っていうか集団行動は……」
 皆それぞれ予定があるらしく、なかなか参加希望者が出てこない。
「先生、それってマネージャーは参加できるんですか?」
 そんな中、里美が手を上げる。
「え? マネージャーって島本君のこと? えっと、あくまでも運動部員だけみたいね。ホストは全部大学の学生さん達と共同でするみたいだし」
「そうですか……」
「……里美さん、別に気を遣わなくても大丈夫だよ」
「……気なんか遣ってないってば! そういうのが自意識……」
「……ちがくって、参加者に制限があるんでしょ? 和彦君はいいとして、他を全部女子で行けばさ……」
 冊子によると桜蘭の割り当ては六人とある。一人は確定しているが、他四名を女子で埋めれば例の男子達を隔離できる。
「……おお、なるほど。さすが紀夫殿! 名案でござるな。先生! あたしも参加します」
 早速手を上げる里美は、他の四人の候補を適当に当てはめていた。

続き

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